2008/10/26

格差を考える

先日、どこかのニュースサイト(読売だか日経だか朝日だか・・・)で書評が紹介されていた、大竹文雄氏が書いた「格差と希望」という本が少し気になり、調べてみると近くの図書館で蔵書があるとのことで、少し読んでみることにした。この本は、格差社会というものについて、いったいどういう格差があり、何が原因で、じゃあ一体どうすればよいのかという議論を、新聞紙面上などに掲載された論説を引用することでまとめられたものとなっており、あまり目新しい内容はない。
若者の間で正社員になるかどうかで大きな格差が発生しているとか、既得権益を持っている人間が規制緩和が格差を招いたと声高に叫び、権益を守るために規制を強化させようとするとか、地方と都市部の格差が拡大しているが、地方でも土地を持っているような人間と、人的資源しか保有していない人間の間では、格差に対する捉え方そのものが異なっているとか、どこかで聞いたような内容がつらつらと述べられており、その一方で色んな文章を引用してきているがために、いまひとつまとまりのない内容となっている。なにしろ、全体を通して読んでも、自分でメモしながらまとめないと、何を言っているのか非常に分かりづらいのだ。
結論としては、格差を是正するためには、規制緩和によって働き口が少なくなってきているような業界に対して、職業訓練などの教育を施すことで、他業種への転換を進めたり、フリーターなどが正社員に採用されやすいような制度を設けることが必要であり、特定の何か、あるいは誰かを悪者にしてしまうのは簡単だが、それでは根本的な解決には到底至らない、としている。
そんな記載の中、就職氷河期を招いたのは、正社員が既得権益である自分たちの待遇を守りたいという欲望から、賃金を低下させるくらいなら社員の新規採用を控えよう、という会社側の提案に乗ったことが原因だとしている。とんでもない話である。正社員の給料はここ数年、減少を続けており、既得権益と呼ばれるような待遇は維持されておらず、そもそも、そのような重要な判断に関与できる組合員など皆無である。さらに言えば、新規採用を抑制し、正社員の数も絞っていこうと会社が動いているのは、単純に景気が悪く仕事も減ってきているからの他ならない。政府が発表する景況判断を鵜呑みにして垂れ流すだけの御用文化人に、このような勝手な発言をされるのは非常に腹立たしいものだ。
さらに、ホワイトカラーエクゼプションについても一部で触れており、ホワイトカラーの勤務時間管理が難しいから、導入は避けられないとしており、残業代ゼロの声については「残業時間の増加を野放しにしていいわけではない」とコメントしている。この著者は、サラリーマンとして勤務したことなど、生まれてこのかた一度も無いと思われる。労働時間を自分で決められる=残業代が支払われない=効率のよい人間は少ない労働時間で仕事を切りあげられる、という論理で話しているのだと思うが、効率のよい、いわゆる仕事のできる人間には、できない人間よりも多くの仕事が割り当てられ、しかも品質も高い成果が出せるため、結果的には長時間の残業をしなければこなせないくらい、大量の仕事をする羽目になる、という現場の実情をまるで理解していないとしか思えない。
一通りの内容を通して読んでみたが、はっきり言って、正規/非正規の労働者を、すべて奴隷化していこうという政府の陰謀に加担する、悪魔の著書であると言えよう。このような政府の陰謀が抱く真意を悟らせることなく、民衆を言葉巧みに導いていくことを意図しているとしか思えない書籍について、推薦するかのように書評に載せる新聞も、政府の労働者奴隷化計画の一翼を担っていると言えよう。格差解消という玉虫色のお題目に飛びついて、労働者全体が不幸になる、そんな計画は断じて阻止しなければならないのだ。
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