政府と東電が繰り返してきた、原発は安定し正常に冷却された状態が保持されているとする説明の根幹が覆されたわけだが、にも関わらず日本各地で定期点検や地震を受けて停止している原発を再稼動させようという動きが止まらない。対策の必要性を認識していながら、反原発の世論が広がることを懸念して法制化を見送ってきた原子力安全・保安院は、電力会社の意向を受けて、ストレス検査の結果から再稼動は問題ないと、国民が誰一人信用していない安全論を振りかざして再稼動を進める方針である。また、福井県では、原子力安全専門委員会の委員が、原子力関連団体から790万の寄付を受けていたり、別の委員が原発メーカーや電力会社から700万円の寄付を受けておきながら、原発に対する発言が左右されることはない、などと到底信憑性に欠ける発言を繰り返す始末に陥っている。
寄付を受けていたのは、三島嘉一郎・元京都大教授と、飯井俊行・福井大教授で、公正に原発の安全性を検証すべき立場の人間が、原発の製造・運転を担う立場の企業・団体から寄付を受けていたことに対しては、原発に対する更なる不信感を煽っているが、にも関わらず、西川一誠・福井県知事は寄付について、「原子力の問題を国民のためにしっかりやるという良心と誇りで委員をやっているのだろう」と述べ、同委の審査には影響しないとの考えを示し、委員や原発関連団体を擁護する発言に終始した。いったい、こんな体たらくで、誰が国民の安全を守ってくれるのだろうか。今日もテレビの報道では、補助金がなくなっては雇用が確保できなくなって、景気に大きな影響が出るという、原発保有地域の市長が原発を擁護するのをさも当然とでも言うように報道し、国民の原発に対する反発をまるでなかったかのような、もう済んだことであるかのように、伝えている。
しかし、震災後、根本的に地震と津波対策が行われた事実はなく、原発を再稼動させた上で次の地震と津波が来れば、福島と同じような事態に陥る原発が出ることは明白で、いったいこの国は民衆の命と安全と、企業の経済活動と、どちらを優先しようとしているのか、懸命な国民であれば自ずと答えはでるだろう。こんな政権、官僚、企業・団体を許してはならない。断じて、国民の生命と安全を優先しないような体制は打破しなくてはならないのだ。
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