2011/11/29

配布されなかった安定ヨウ素剤

11月29日付けのThe Wall Street Journal(ウォールストリートジャーナル日本版)の記事で、福島第一原発が東日本大震災直後にメルトダウンを起こした事故の関連で、政府の致命的な失態を報道している。記事の出だしはこうだ。。。。

「東京電力福島第1原子力発電所の3月11日の事故による放射線のリスクを最小限に抑えることができた可能性のある錠剤が数千人の地域住民に配布されていなかったことが、政府の関連文書で明らかになった。」

原発事故の直後に、特に児童に対して配布することが期待されていて、各自治体で備蓄されていた安定ヨウ素剤。これは、放射性ヨウ素が人体内の甲状腺に蓄積することを回避できるため、原発事故後などに服用することで、甲状腺がんの発症を予防する効果があるとされている。

原発事故後、原子力安全委員会では、直ちに住民に対して安定ヨウ素剤を配布し、服用させるべしという提言を、原子力安全・保安院(要は、原発事故後に東電と一緒になって記者会見を連日開いていた奴らの事だ)に対して行ったにも関わらず、この提言は最終的に原子力安全・保安院では認識されず、結果として薬剤の配布が行われなかったというものだ。

原子力安全・保安院では、事故後の混乱で情報が錯綜していたのと、住民の避難を優先しなければならないという先入観があったことで、情報が欠落した可能性があるとしているが、ここに大きな疑問がある。当初、原子力安全・保安院では、メルトダウンの可能性を真っ向から否定し続け、あくまで原発は制御下にあってなんら問題は発生していない、という姿勢を見せていたということだ。にも関わらず、混乱で情報が欠落した、というのは、おかしいのではないのか。

疑問は疑惑となり、疑念を抱かせる。それは、当初から本来は安定ヨウ素剤を服用させる必要があったにも関わらず、事故の重大さを隠蔽したいがために、その重大さを伝えてしまう、薬剤の配布を意図的に行わなかったのではないのか、という疑念だ。実際、原子炉内の圧力が上昇した場合に、直ちに行わなければならないベント(弁の開放)作業を先延ばしにし、海水を注水してでも炉心冷却に務めなければならない時に実施を見送り、最終的に原発建屋の水素爆発を招いていることを考えると、当初、事態を矮小化するために、薬剤の配布が必要であることを知りながら、自治体にはその事実を伝達しなかったのではないのか。

政府・民主党はもとより、自民党その他政党政治家、各種メディアには、この問題の徹底した追及を期待したい。もっとも、海外メディアで報道されて、ようやくテレビ朝日で報道されるような、政府に迎合してしまうようなメディアでは、追及を期待するのは高望みと言うものか。我々、国民がいかに政治家を御することができるかに、今後の日本はかかっていると言えるかもしれない。

2011/11/27

震災のがれき受け入れを拒む県は交付金をカットせよ

東日本大震災で、大きな被害を受けた宮城県では、震災と津波によって発生したがれきの処理が進まず、それが復興の大きな足かせになっているのだとか。政府と宮城県は、各自治体に対して、がれきの受け入れを要請しているが、東京都や山形県を除いて、その他すべての自治体では受け入れを拒む状況が続いている。

放射線レベルが高いかもしれない、国から示された放射線の安全基準が信用できない、などとお題目ばかり並べているが、実際にがれきを調べても、ほとんど放射線が検出されることはなく、受け入れを拒むための言い訳に利用しているのは明白である。なにしろ、実際に原発がある福島県のがれきについては、国で全て処理を行う事となっており、低レベルの放射性廃棄物にすら該当しないような、一般ごみを拒む理由としてあげているのだから、お話にならないとか言う以前の問題であろう。

政府は、がれきの放射線レベルが低く、安全基準に問題がないのであれば、がれきの受け入れを「要請」などせず、各自治体の規模に応じて、強制的に受け入れを義務付けるべきであろう。それを拒むようであれば、その自治体に対して国から交付されている補助金の支払いを停止する、あるいは、補助金自体を「がれき撤去協力金」などという名目に変更し、受け入れた自治体にのみ支給するように改めるべきである。

もちろん、交付金がなくなれば、道路を作る事も出来ず、行政サービスも大幅に低下することが避けられないだろうが、この有事に際して協力することすらできないようなら、そんな自治体は日本から出て行けと言いたいほどで、まさに日本の恥と言えよう。それでも協力できないという自治体には、そのくらいの罰を与えるべきだろう。信賞必罰、と言うではないか。

ダム1つを決めるのにどれだけ時間をかけるのか

民主党がマニフェストに掲げている、いわゆる「八ッ場(ヤンバ)ダム」の廃止論議だが、いまだに一向に結論が出る気配すらない。国交省が検証した結果、ダムの建設が一番、効果的だという話に対して、そもそも国交省に検証させること自体が猫にかつおぶし状態なのだという突っ込みもなければ、検証の前提となっている数値、資料の信憑性、正確性について、問い詰めることすらできない始末。ただ単純に、自分たちが言ってきた事に反する結果が出てきた事について、半ば感情的に否定を繰り返すばかりで、政権交代から2年が経過したが、議論は1ミリも進んでいない。

前にも書いたが、経済効果や治水効果を検討するのに、なぜ建設主体である国交省に依頼するのか、そこからして大いに疑問がある。利害の当事者に対して、公平公正な検討をせよなどと命令したところで、なんらかの思惑が入った結果が出てくるのは、火を見るよりも明らかで、依頼者の見識が疑われるばかりだ。まず一番最初の入り口すら統制できていない、民主党政権、議員の力の無さ、頭の無さを際限なく見せられては、期待感が無くなるのは当然と言えよう。さりとて、自民党に任せればこの問題を解決させられるのか、と言えば、単純に元の計画通りに建設してお終いにしてしまうのが目に見えているだけに、だからこそ民主党の支持がこれほど低下しても、自民党の支持も伸びないという状況に陥っているのだろう。

どの政党、政権に期待するのかはひとまず棚に上げて、まずはダムの必要性について、利害関係の無い第三者機関に対して検証を政府として依頼するのが筋ではなかろうか。そんなこと、これまでやった実績が無い、慣例では担当省庁に依頼することになっている、だからやらない、なんて馬鹿げた考えは捨てて、とっとと公正な検証を依頼するべきであろう。日本でも米国でも欧州でも、どこかしらで複数の民間シンクタンクに対して、ダムの費用対効果について、分析をさせた上で、ダム以外の選択肢がどんなものがあるのか、そもそも、何らかの対策が必要なものなのか、そこから検討させるべきであろう。

だいたい、治水効果のためにダムが必要だからと言って、作り始めてから既に数十年が経過しているが、まったく必要性を感じさせるような事態は、可能性があったという水準ですら、一度足りとて起きていない事実があるのだ。なにしろ、これまでの流量に対して倍の規模で洪水が発生することを前提として、だからダムが必要だ、という理屈で進めてきた事業なのだ。そんな洪水が実際に起きるのかといえば、到底、起き得ないと考えるべきであろう。

こう言うと、賛成派はすぐに、東日本大震災のように、想定外の事態に備える必要性を口にするが、ダムを作ったあとで大地震が発生して、そのダムは本当に大丈夫なのかと問いたい。実際、東日本大震災では、ニュースではほとんど取り上げられなかったが(津波と原発の方が被害が大きかった)、福島県須賀川市の藤沼ダムが決壊し、多数の死者も出ているのだ。地盤が弱いと指摘されている八ッ場ダムが決壊したら、被害は甚大なものとなるであろう。それこそ、新たな災害リスクを生み出すこと以外のなにものでもないのではないか。そのあたりも含めて、十分な検証を行ってもらいたいものである。

2011/11/02

福島は終わらない

福島第一原発の二号機から半減期が最長の同位体127でも36日と短いキセノンが検出されたことで、冷温停止したと見られていた同二号機において、核分裂反応が起きている、つまり、恐れていた再臨界に繋がる可能性がある事が判明した。これを受けて、東京電力は誤検知の可能性もあるとしながら、中性子を吸収して核分裂反応を抑制する効果のあるホウ酸水の注入を開始したと発表した。

なんともお粗末な展開再びと言うしかないが、何が誤検知の可能性もあるだ。事故直後にも、異常な数値を計測したことについて、機器の故障による誤検知と発表していたが、詳しく調査した結果、あれほどの被害を受けたにも関わらず、計器は正常に動作しており、それを評価する東電側の認識の甘さだけが問題であったことを露呈したばかりではないか。

状況から推察するに、格納容器内は100度以下に保たれているという発表が真実なのであれば、容器外に漏れた核燃料が圧力容器、またはその外側に集積し、相変わらずの高温を維持し続け、核分裂反応を起こしているのだろう。この状況で格納容器にいくらホウ酸水を注入しても効果は期待できず、一刻も早く原子炉全体を水没させて冷却するためのプールを建設する必要があるだろう。

政府主導でなければ、そんな判断は下せまいが、野田ドジョウ政権では望むべくもない。いまこの瞬間に奴が総理であったことが、日本にとっての悪夢だろう。
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2011/11/01

あまりに稚拙なTPP賛否議論

いま、日本の将来を大きく変える可能性があるTPP交渉への参加是非を巡って、与野党入り乱れて賛否両論での議論が行われているが、その内容たるや、なんと稚拙なことか。反対派は、農業や零細企業が立ち行かなくなるの一点張りで、端から見ていると既得権益、既存産業を守ろうと言う意図しか見えない。じゃあ、具体的に導入されたらそれらを守るために何が必要なのか、何のために守るのか、なくなったらどうなるのか、そのあたりの予測や考えは一向に出てこない。

賛成派にしたところで、輸出産業の競争力が失われると訴えては、伝家の宝刀よろしく使い古された産業の空洞化を持ち出すばかり。具体的に産業の空洞化が進むと、いや、実際には既に海外現地生産が進んだ今、どう空洞化するのかと言う話もあるが、どうなるという説明も予測も一切出てこない。導入した場合のデメリットだってあるはずなのにそれには触れず、否定派に指摘されるとメリットを強調するか、やらないとはじまらないなどと精神論まで持ち出す始末。これがこの国の政治家のレベルなのかと考えると、TPPなんか導入したら、したたかな海外勢にあっという間に蹂躙されてしまうのではと、心配になるのは私だけではないだろう。

頼りにしたいマスコミも政治家とコメンテーターを招いての討論を流すばかりで、独自の取材や調査に基づいた予測など欠片も見られない。こんな状態であと二週間後くらいに参加表明を決断するなんて、よもや本当に時間切れなので、とりあえず参加しますなどと言い出すつもりなのだろうか。そんなことしかできないのなら、政治家など無用の長物である。とっとと、アメリカの51番目の州にでもしてもらった方が国民にとっては幸せかも知れぬ。

あぁ、こんなんだったら天皇主権の方がマシだよ。情けないにも程がある。
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