2011/11/27

ダム1つを決めるのにどれだけ時間をかけるのか

民主党がマニフェストに掲げている、いわゆる「八ッ場(ヤンバ)ダム」の廃止論議だが、いまだに一向に結論が出る気配すらない。国交省が検証した結果、ダムの建設が一番、効果的だという話に対して、そもそも国交省に検証させること自体が猫にかつおぶし状態なのだという突っ込みもなければ、検証の前提となっている数値、資料の信憑性、正確性について、問い詰めることすらできない始末。ただ単純に、自分たちが言ってきた事に反する結果が出てきた事について、半ば感情的に否定を繰り返すばかりで、政権交代から2年が経過したが、議論は1ミリも進んでいない。

前にも書いたが、経済効果や治水効果を検討するのに、なぜ建設主体である国交省に依頼するのか、そこからして大いに疑問がある。利害の当事者に対して、公平公正な検討をせよなどと命令したところで、なんらかの思惑が入った結果が出てくるのは、火を見るよりも明らかで、依頼者の見識が疑われるばかりだ。まず一番最初の入り口すら統制できていない、民主党政権、議員の力の無さ、頭の無さを際限なく見せられては、期待感が無くなるのは当然と言えよう。さりとて、自民党に任せればこの問題を解決させられるのか、と言えば、単純に元の計画通りに建設してお終いにしてしまうのが目に見えているだけに、だからこそ民主党の支持がこれほど低下しても、自民党の支持も伸びないという状況に陥っているのだろう。

どの政党、政権に期待するのかはひとまず棚に上げて、まずはダムの必要性について、利害関係の無い第三者機関に対して検証を政府として依頼するのが筋ではなかろうか。そんなこと、これまでやった実績が無い、慣例では担当省庁に依頼することになっている、だからやらない、なんて馬鹿げた考えは捨てて、とっとと公正な検証を依頼するべきであろう。日本でも米国でも欧州でも、どこかしらで複数の民間シンクタンクに対して、ダムの費用対効果について、分析をさせた上で、ダム以外の選択肢がどんなものがあるのか、そもそも、何らかの対策が必要なものなのか、そこから検討させるべきであろう。

だいたい、治水効果のためにダムが必要だからと言って、作り始めてから既に数十年が経過しているが、まったく必要性を感じさせるような事態は、可能性があったという水準ですら、一度足りとて起きていない事実があるのだ。なにしろ、これまでの流量に対して倍の規模で洪水が発生することを前提として、だからダムが必要だ、という理屈で進めてきた事業なのだ。そんな洪水が実際に起きるのかといえば、到底、起き得ないと考えるべきであろう。

こう言うと、賛成派はすぐに、東日本大震災のように、想定外の事態に備える必要性を口にするが、ダムを作ったあとで大地震が発生して、そのダムは本当に大丈夫なのかと問いたい。実際、東日本大震災では、ニュースではほとんど取り上げられなかったが(津波と原発の方が被害が大きかった)、福島県須賀川市の藤沼ダムが決壊し、多数の死者も出ているのだ。地盤が弱いと指摘されている八ッ場ダムが決壊したら、被害は甚大なものとなるであろう。それこそ、新たな災害リスクを生み出すこと以外のなにものでもないのではないか。そのあたりも含めて、十分な検証を行ってもらいたいものである。

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