今日の1冊 |
通して読んでみたところ、世界各国で行われている貧困層に対する社会支援に対して、日本のそれは大きく遅れているというよりは、ほとんど何の対策もとられていないばかりか、政府は子供たちに対する貧困が存在していることすら認めておらず、国民の間でも殆ど関心を持たれることもないため、OEDC各国の水準と比較しても、非常に劣悪な環境にあるということが分かった。なにしろ、政府が何らかの支援を行った場合、諸外国の場合は経済的に困窮している生活環境はある程度改善することが確認されているが、日本の場合は逆に政府が援助をすることで、却って経済的な困窮が助長されるという、マイナスの効果を生み出しているというのだ。何のための援助なのか、政府は今一度、社会福祉政策の見なおしを早急に行ってもらいたいものだ。
しかし、この山野良一という著者は、著書の最後でこれまでの説明を全て台無しにしてしまう発言をする。しょせん、福祉の現場で働いている一介のソーシャルワーカーに過ぎない私には、これを何とかするのは荷が重過ぎるようだ、と。何を言っているのだ。そういう自分で何かを変えなければいけない、誰かが何かしてくれるのを待つのではなく、自らが率先して何かを為していかなければならない、そういう姿勢を現場で働く人間が示すことで、世間や政治を動かすことができるというのに、それを最後に放棄してどうするのだ。
そもそも、本書には、色々と現状の問題が報告されているにも関わらず、じゃあどうすれば解決するのか、政治に対して何を求めていくのか、そういう主張が全くと言っていいほど見受けられないのだ。これでは、本書を出版して国民に啓蒙を促そうとしても、そういう問題があるんだ、ということだけで意識は完結してしまい、具体的に何をしなければいけないのか、訴えることなど出来ないだろう。もう少し、踏み込んだ内容を期待していただけに、最後は期待はずれに終わったと言うしかない。もっと改善を求めるところに力を割いて欲しかったというところだ。
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