2009/05/09

補償金制度、崩壊

パナソニックや東芝が、春から発売しているデジタル放送専用のBD録画機器について、著作権料、いわゆる補償金の上乗せ徴収には協力できない、という趣旨の書簡を著作権管理団体に送っていたことが5月8日になって判明した。理由としては、これらの機器については違法コピーなどを防止するための技術(たとえばダビング10など)が導入されており、補償金の課金対象であるかどうか疑問があり、メーカーの判断で消費者からの徴収はできないため、としている。これに対して文科大臣の塩谷氏が法律で規定されている義務に従わないのは問題があるとして、公の場でメーカー側の対応を批判する事態となっているようだ。
補償金というのは、違法コピーなどで著作権者などが本来得るべき収入が損なわれてしまうことに対して、録音・録画できる機器に対してあらかじめ課金することで、遺失利益を保証しようという趣旨に基くものだが、以前にも書いたとおり、この考え方自体が前時代的であり、いまの社会にはなじまないものとなっている。なぜ、違法コピーを行って利益をあげている悪人の行為によって失われるかもしれない利益を、なんの違法行為も行っていない善良な一般利用者が、遺失利益が発生する前にあらかじめ支払っておく必要があるのか。違法コピーで遺失利益が発生した場合は、その違法コピーを作成している個人なり団体に対して損害賠償を請求すればよいのであって、補償金制度というものは極めて不合理で不正義な制度だと言えよう。
大手メーカーが公然と徴収に対して反旗を翻したのは、ダビング防止のためにさまざまな技術を導入するコストまで負担させられたと言う思いがあるのに加え、さらに補償金まで支払うことになれば、結果として販売価格の上昇を招き、景気低迷の中で売れ行きに大きな影響が出る事を恐れている、と言うのが大きな要因ではないかと推察されるものの、一消費者としては非常に歓迎すべき動きではある。この機会に、補償金の徴収制度そのものを見直す機運が高まり、どうやって著作権者の権利を保護していくのかという根本的なところに立ち戻って、議論されることを期待したい。著作権者、メーカー、消費者すべてが納得して恩恵を被るような制度が出来てこそ、コンテンツ産業の振興につながっていくというものだ。
世界的にもこのような議論は未だ結論には程遠い状況だが、日本が世界に先駆けて新しい制度を構築できるよい機会でもある。ここはひとつ、批判しかできない塩谷分科大臣の言うことに左右されず、抜本的な制度の見直しを進めて欲しいものだ。
??R:

0 件のコメント:

コメントを投稿