2006/07/28

「検出されないことが多い」は安全か

本日、ついにかねてから懸念していたアメリカ産牛肉の輸入再開が、国民の猛反対を押し切って決定されてしまった。これでアメリカ産牛肉が明日から店頭に並ぶかというと、そういう訳ではなく、流通や輸送の問題もあり、実際に家庭の食卓や外食産業のメニューに登場するのは8月中旬以降ではないかと言われている。
この決定にいち早く反応したのは、以前からアメリカ産牛肉の安全性に疑問を呈し、輸入再開後もアメリカ産牛肉の不使用を公言していた、牛丼チェーンのすき家を運営するゼンショーであった。現在、オーストラリア産の牛肉を使用して牛丼の販売を行っているが、アメリカ産牛肉の輸入が再開されても安全性が担保できないとして、使用しないことを改めて表明したもので、国民の声を代弁する企業として個人的にも非常に評価されるべきと思われる。
それに対して、アメリカ産牛肉の輸入停止以降、牛丼の販売を停止している吉野家D&Cは、以前からアメリカ産牛肉でなければ美味しい牛丼が提供できないとして、輸入が再開されればアメリカ産牛肉を使用して販売を再開することを表明していたが、改めて9月ごろには牛丼の提供を行う見通しを発表した。国民の声を無視した、政府よりの企業で何らかの見返りがあるのではないか、という疑念さえ抱かざるを得ないような態度である。
吉野家は公式ホームページで、アメリカ産の牛肉がいかに安全で、日本の求める全頭検査がいかに科学的根拠に欠けた精神論であるかを説いており、いかにも輸出を早く再開したいアメリカ側の視点にたっており、日本国民を危険に晒すことなど全く歯牙にもかけない、大層な企業倫理をお持ちなのだと感心させられる。
諸外国のデータとして、30ヶ月以上の牛についてBSEの検査を実施することが安全を担保しているかのように謳っているが、30ヶ月未満の牛の場合、検査をしても感染が検出されないことが多いことを拠り所としている。これは単純に言えば、「検出されない」=「検査しても意味がない」=「だから安全だ」という力ずくの3段論法であり、到底一般市民には受け入れられるものでないのは明白である。検出されないことが多くとも、検査を実施することでより一層の安全性が確保されるにも関わらず、最初から検査する労力を惜しみ、少しでも原価を削減して利益をあげようという隠れた意図が感じられるのは私だけだろうか。願わくば、国民の大多数も同じ意見を持って、吉野家の牛丼を拒絶するくらいの気概が欲しいものだ。

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